桜の花に
春彩られる町
毎年5日間、日本列島のちょうど真ん中に位置する奈良県吉野を囲む山々の桜の木は、幾千もの花を一斉に咲かせ鮮やかな色で町を彩ります。このわずかな期間、はっと息を呑むような桜景色を愛でに、吉野の町には大勢の観光客が訪れ、緑と自然豊かな杉林を持つこの町の魅力を発見するのです。
桜の季節が終わると観光客の人数は減り、町には静けさが戻ります。現代人が伝統工法や質に重きを置いた素材に背を向ける中、第一次産業の町は年々廃れつつあります。ほんの数十年前まで吉野の町の人口は今の2倍もあり、その多くが持続可能な林業従事者でした。
より深刻なのは、高齢化と出生率の低下に加え、若者は大きな都市に出て行くため、急激な人口の減少に見舞われているということでしょう。吉野が特別なケースというわけではなく、この先数十年で、700もの町や村がなくなってしまうのではとの懸念があります。こうして、地域経済には不安が生じ、国の文化遺産も危機に晒されているのです。
“このプロジェクトでは、特に人口減少をはじめとする、吉野の町が直面する問題に、林業の支援、空き家の活用、この地域への観光集客の面から取り組んでいます。”
千年の歴史
吉野はそもそも村々が集まってできた町で、現吉野町は1945年に旧吉野町、上市町、中荘村、中龍門村、国樔村、龍門村が合併して生まれました。
この町で最も古い歴史を持つ産業は、住民の暮らしを囲む森林からはじまりました。恵まれた気候と集約的な伝統技術が合わさり、「吉野杉」と「吉野桧」は全国でも卓越した品質の木材のひとつとして、400年もの間その名を馳せています。
たくさんの寺院や神社が点在する「吉野」は、7世紀に書かれた古事記、日本書紀、万葉集にも記述があり、日本の歴史にもゆかりのある土地なのです。後に天武天皇となった大海人皇子が壬申の乱の前に身を潜めたのも、1330年代に北条幕府を倒して建武の中興を遂げた後醍醐天皇が南朝の拠点として選んだのも吉野です。
吉野は、高野山と熊野三山と共に「紀伊山地の霊場と参詣道」として、2004年にユネスコ世界遺産に登録されました。
出典: ふるさと吉野 懐古写真集 (吉野町文化協会、1986年発行)
吉野の人々
イラストレーター・Airbnbホスト
酒樽職人
漁師
醤油造り職人
和紙職人
“吉野杉の家は、私の子どもたちも含め、地域の若い人たちにホストになる自信を与えているような気がします。”
“ホストをはじめる前は、海外は危なくて怖いところという漠然とした印象があって、あまり日本国外には興味がありませんでした。でも、いろんな国から来るゲストと会うことがだんだん楽しくなって、いつの間にかみんなの住む国のことをもっと知りたい、行ってみたい、と思うようになっていました。吉野杉の家に訪れるゲストのみなさんは本当にすてきで、柔軟な視野を持つな方ばかりで、Airbnbの文化を映し出しているように感じました。”