建築以上の家をめざして
人がいない建物。それはただの彫刻に過ぎません。絶賛し崇めることはできても、愛を感じることは稀です。テクノロジーが未曾有の進歩を遂げる中、人は天高く聳えるビル、都市、巨大建築を生み出してきました。しかしそこには人が充実した時を過ごせる空間はあまりなく、ある種、輝きは眩いのだけど一歩離れると簡単に記憶から消し去られてしまう宝石のような部分があります。
強い建築を創るためには、空間自体が人と人とをつなぐ血管の役目を果たすようでなければなりません。デジタル化が進む世界にあっては、より深く、よりシームレスな絆を追求するのは建築家にとってもかなりの努力を必要とします。コミュニティを分断する壁を破るというお題目も後回しになってしまいがち。しかし建築とは本来、人生が起こる舞台であり、コミュニティがつながる舞台なのではないでしょうか。